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Beach House & English 米刻堂
ヘネベリー有紀

波子の町をいろんな人に見てもらいたい。別に波子が好きだからじゃないんですよ、住むところだから好きになってるんです。この感じわかりますか? 私の思考は何をやるにしても「どうせやるなら楽しくやろう」なんです。楽しくやっている「フリ」をしてるうち、いつの間にかどんどん楽しくなっちゃうんです。

GO GOTSU special interview #18
 
 

 

江津の波子(はし)と聞いて真っ先に思い浮かぶのはあの広い海岸だ。季節を問わず波が立てばサーファーが集まり、夏休みシーズンはたくさんの海水浴客で賑わう。そして高台にある古城山展望台からは石州瓦とその家々が一望できる。路地裏散策も楽しいし、ゲストハウスもある。大崎鼻にある灯台も絶好の景観スポットだ。

そんな個性的なエリア波子。その一角に英語が学べ、フリーでオープンなライブラリやコワーキングスペースを兼ねた再生古民家『米刻堂』というスポットがある。運営者の“YUKI先生”ことヘネベリー有紀さんは、バイリンガル子育ての経験から英語の絵本の読み聞かせをしながら英語に楽しくアプローチできる環境づくりを行っている。「なぜ英語を学ぶのか?」「なぜ英語を教えるのか?」そして英語教室だけではない「少し先にあるなにか」についてお話しを伺った。

 

私は家を建てたいとかそういうのが全然なくて中古とか古い家が良くて。(夫は米国人ですが)アメリカって古い家を買って住むとかそういう文化なんですよ。古い家は良いんですけど「ちょっと古い」のは嫌で。古いならとことん古いのがいいなと思って浜田だけではなく、江津とか三隅とか枠を広げて3年も4年も探していました。


 

▲古民家が綺麗にリノベーションされ、本棚には英語の本、雑誌、絵本がびっしり置かれている。

 

まずはヘネベリー有紀さんの自己紹介、バックグラウンドをお聞きしたいです。関東からのIターンになるんですよね。江津に来るまでにやっていたお仕事や暮らしなど、10年間くらいの時間軸で聞かせてください。

 

ヘネベリー有紀さん(以下、YUKIさん):移住して20年以上なので、それくらいの感じで話しますね。私は生まれは横浜、小中学校は岐阜県で、その後また関東に戻ってからは千葉とか神奈川とかで暮らしていました。千葉で夫(米国人)と知り合ったんですけど、夫の仕事が島根県立大学になったので、しばらくは遠距離で交流していました。その後結婚したんですが、子育てをするのに東京とか千葉で育てるのはどうかなと思ってて。そのとき住んでたマンションの話ですけど、近所同志挨拶もしないような場所だったし、名残惜しいこともなく、きっぱりと島根に来ました。20年ちょっと前の話ですね。

初めは金城町(浜田市)に住んでいました。そこで子どもを2人産んで育てていました。子どもが5歳くらいの頃に山梨県の甲府というところに(夫の)仕事の関係で移りました。山梨では子どもにも習い事をさせたりしていて。山梨も半都会みたいな感じでよかったんですけどね。それでもまた県立大学の仕事で島根に戻ったんです。島根に戻ったときは大学の宿舎に7、8年住んでいました。次は金城ではない場所がいいなと思って、浜田で家をずっと探していたんです。

私は家を建てたいとかそういうのが全然なくて、中古とか古い家が良くて。アメリカって古い家を買って住むとかそういう文化なんですよ。日本って家を買うと売る時に二束三文だし、買うのは躊躇してたんですけど、浜田は気に入った物件がなかったんですね。古い家は良いんですけど昭和のキラキラした感じとか「ちょっと古い」のは嫌で。古いならとことん古いのがいいなと思って江津とか三隅とか、枠を広げて3年も4年も探していました。そしたら丁度ここ(米刻堂)の隣(自宅)が空き家バンクに出ていて。はじめはいろんな事情ですぐに手に入れることができなかったんですが、その後すぐに別のタイミングでこの家にまた巡り合って。今度はすぐに手に入れることができました。家族も全員気に入ってくれて。

それで4、5年住んでいたら、今度はここ(米刻堂)に住んでいたおばあちゃんが出られて空き家になったんですよ。「隣の家は空いたら買え」ってよく言うじゃないですか。内見させてもらったら広いし、なにかに使えるなと思って手に入れたのが今から2年前です。それまで自宅を使って英語を教えることをしていたんですけど、この場所を使ってもっと生徒を増やしてちゃんとやろうかなと思ったんです。娘もちょうど家を出る時、また東京の母もこちらへ移住が重なって、始めざるを得なかったというか、タイミングが合ったという感じですね。

 

 

▲米国人のご主人は島根県立大学で働いている。

 

20年前と言えば、「地方移住」「田舎で起業」「DIY」「セルフビルディング」「地域コミュニティ」みたいなワードやそういうカルチャーがなかった時代ですよね。浜田も江津もほんとにただの田舎で、むしろ都市部から移住したら「なんでこんなところを選んだの?」って真顔で聞かれるような、そんな時代でしたよね。

 

YUKIさん:本当にそうです。ただ私は夫が育ったアメリカの田舎暮らしを見てたら感覚が変わったんですよ。夫はボストンの北のニューハンプシャー州出身なんですけど、窓開けたら景色がいいところなんです。そういうことを考えながら住む場所を決めてきたんですね。それまでの私は、窓を開けたら隣近所でもいいし、便利だったらいいしっていう感覚だったのに、アメリカにいたら「ああ、なんか豊かな暮らしだなあ」と思うようになって。季節を感じたり紅葉を見たりとか。向こうは、おばあちゃんでも海を裸足で歩いていたりするんですよ。

 

米国のあの乾いた空気とか、大陸的なフィーリングとか、ボストンで言うと古いレンガ色の町並みや石畳など、景観そのものがはじめて見ると興奮しますよね。音楽とか映画のようなエンターテインメントやストリートカルチャーがそのままアメリカ人のライフスタイルに結びついてるような。道端に生えてる草木やガードレールのデティールとか、看板ひとつとってもシンプルではっきりしてるとか、なんというか適当な感じなのにそのほとんどがクールに見えるというか。。

 

YUKIさん:「アメリカに憧れる時代」みたなのはあったのかもしれませんね。アメリカの家って不思議と綺麗に整理されていますよね。家が大きいからっていうのがあると思うんですけど、どの家行っても片付いてるんですよ。「あ、片付けるからちょっと待ってて」なんてなくて。棚がどーんとあってそこに全部収納するからテーブルとかカウンターにモノが置いてないんですよ。アメリカの家のそういうところはストレスなくていいなって。夫にもたまに「引き出しの前にモノ置くな」って言われるんですけど、たしかにそうだなって。「はい、すいません」みたいな感じで納得したりして。だんだん私もそういうマインドになったんですよね。

 

▲室内のあちこちにポップカルチャー色のある装飾があって楽しい。アメリカの家にいるようだ。

 

2年前に米刻堂ができて、今、具体的にどういう事業をされていらっしゃるんですか?

 

YUKIさん:メインの英語教室の部屋の他に、4つの個室があるんですけど、大学生に住んでもらって「地域と何か関わってもらいたいな」と思っています。この地域は高齢者が多いので行事、例えばお神輿を担いだり、運動会に出たりとか、町清掃とかそういうときにもっと若手がいたらいいなと思って始めたんです。

コロナもあってすぐに入ってくれる人もいなかったのですが、空けてるのはもったいないので民泊をやり始めました。その後、大学生が入ってくれたり、この夏は入れ替わり立ち替わりで部屋を利用する方がいたりと動きが出てきた感じです。Airbnb(エアービーアンドビー:世界最大手の民泊仲介ウェブサイト)を使っていろんなところから人が来てくれます。他にも英語の読み聞かせを地域の保育園でやったり、まずは地元のお子さんに英語に触れてもらうことを大切にしています。子育てしていたときに英語の絵本をたくさん持っていたのでそれを使ってライブラリーも開放しています。

 

▲2階にあるコワーキングスペース。波子の地域づくりにも参画してほしいということで大学生に使ってほしいという意図がある。

 

米刻堂という名前はどうやって決めたのでしょうか。

 

YUKIさん:波子って苗字が同じ方が多いんですね。なのでお家に屋号が付いてるんです。私たちが引っ越してきた家が米沢屋さんだったんですね。「米」という字が付いていて。それはお迎えにある米屋さんが本家で、米沢屋さんの方が分家だったらしいんですけど、「米」が付いていると親戚筋らしいんです。私たちはIターンでそういう関わり合いがないので「混乱しちゃうから好きにつけなさい」と町内会長さんに言われて。

夫が米国人っていうのもあったので「米」は使いたいなと思って島根の「根」を使って「米根屋」にしたんです。ここは元々温清堂っていう名前があって「堂」は残したいなと思ったんです。「堂」という字は人が集まる場所という意味もあるし、使いたいなと。「米国堂」にするとそのまんまっていうことで、「刻」は「一緒に時間を刻みましょう」とか「一緒に時を過ごしましょう」っていう意味があるのでこの名前にしました。

 

学生さんと交流する機会が多いんですけど、長い間勉強してきているけれど発音やリズムがイマイチなんですね。それは習っていないからなんです。英語的な思考、例えば、自分の意見を述べ理由を添えるのも日本語とは違いますよね。


 
英語の読み聞かせをやることや、英語を教えるということについて、ご自身の中ではどんな風に捉えているんでしょうか?そもそも英語を教えようと思ったきっかけのようなことがあったのでしょうか?

 

YUKIさん:私は教室でフォニックス(英語の文字と音の関係)を教えています。ルールを覚えそれに従って読めるようになっていく学習法でネイティヴの子どもたちはそうやって読み方を体得していきます。私の子どもたちも教わりました。「リピートアフターミー」ではなく自力で読めるようになるんです。目標はいつか“本を読めるようになって欲しい”の願いがあります。

学生さんと交流する機会が多いんですけど、長い間勉強してきているけれど発音やリズムがイマイチなんですね。それは習っていないからなんです。 英語的な思考、例えば、自分の意見を述べ理由を添えるのも日本語とは違いますよね。 私が昔、英語初心者で英会話スクールで学んでいる時、必ず理由を聞かれていました。好きな食べ物から始まって音楽や映画のジャンル、何につけ「Why」と。 理由を言えないと悔しいのでそれを考える習慣が身につきました。(笑) その機会を学生さんたちと共有したいですね

 

▲コミュケーションツール(言語)としての英語だけでなく、思考力や意思決定にも英語の力は活用できる。

 

国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」(本部・スイス)の『2022年の世界主要国の英語力ランキング』の発表によると、非英語圏の112カ国・地域の中で、日本人の英語力は80位という調査結果が出た。年々順位を落とし、韓国、中国よりも下位のレベルである。根本には日本の学校教育における英語学習のあり方にも問題はあるのだろうが、それだけではないはずだ。
どうして日本人は英語が苦手なのか。そもそもどうして英語を学ぶ必要があるのだろうか。スマホアプリやChatGPTなどAI技術がより発達し、リアルタイム翻訳はもちろん、言語のコミュニケーションのあり方そのものがテクノロジーによって変革されていく未来はきっと訪れるだろう。それでも人間本来の「会話」はなくならないはずだ。

 

YUKIさん:いくら英検やTOEICでいいスコアをとっても「自分の意思」「自分の考え」がなければ結局「何?」ってことなんですよ。例えば海外に出た時によく聞かれるんですよ「日本の文化は?」「日本の歴史を知りたい」みたいなことを。私自身、そのときに応えられないことがありました。「あ、私日本のこと知らない」って。だから日本のことを知らないといけないと痛感した。英語を学ぶときも、まず自分のことを知ることが大事なんです。「私の好きなことは○○です」とか「私の好きな食べ物は○○です」というような自分のことを伝えること、その理由も言えること、自分の家族のこと、自分の住む街のこと、市、国、そういうことを知ることが重要だと思ったんですね。

私は外に出たシチュエーションでそういう気づきがあったわけですけど、それならみんな出たらいい、とも思うんですね。(英語の能力が上がらない理由は)日本に住んでいて英語ができなくても不便はないからだと思いますよ。必要に迫られれば少しはできるようになると思いますけど。

「英語?ポケトークアプリがあるからいいや」っていう子もいます。それならそれでいいんじゃないとも思います。AIアプリもいいですけど、結局使う本人がどう思うかでしょうね。私は例えばオバマさんの演説を聞いたとき、その瞬間に自分の目と耳で理解したいと思うんです。だからそういう子がいたら「それ使っときんさい」っていってやんわり流します。「ああ、今はきっと英語を学ぶタイミングじゃないんだな」って。生の英語をそのまま理解できるようなそんな感覚をおぼえてもらったら嬉しいなと思いますし、そういうことを感じてもらえる環境を提供したいなって思います。

 

▲受け答えがサバサバしていてテンポが良いYUKIさん。話を聞いていて気持ちがいい。

 

本質的なことを発言してくれるYUKIさん。なぜ英語を教えるのか、自分がやるならどんな英語なのか?どんなやり方なのか?そしてそれをきちんと自分で説明できること。米刻堂の個性を感じつつ、そういう感覚や意識を持っているYUKIさんにとって、波子、江津、島根西部での暮らし、コミュニティなどはどんな風に映っているのだろうか

 

シンプルに、江津での暮らしについてお聞きしたいです。

 

YUKIさん:私は(ここでの暮らしを)大自慢してますよ。今ってどこ行っても、駅前は同じような感じだし、街中には大きなモールがあったりっていう。個性がないじゃないですか。江津って個性あると思うんですよ。ちょっと前まで「東京から一番遠い町」って言われてたり。ずっとそのままがいい、新幹線なんか来るなーって思ってたんですよ。不便を体験しに来てくださという感じですかね。

私よく言うんですよ。「うちはバス停からも駅からも歩いてすぐなんです。」「でもバスも電車も来ないんですよ!」って。都会はバスも電車も行けば来るっていう生活でしょ?ここではバスも電車も来ないこと。でもそれに自分を合わせるんです。それがいいと思えるかどうかですね。不便なことは貴重だなと思います。江津は丁度島根の真ん中にあるので旅行者はここを拠点に出雲に行ったり、津和野に行ったり、最後は広島行ったりっていう風に過ごせるわけですよね。

波子という小さなエリアに特化してお聞きするんですが、波子はどんな特徴がある地区なのでしょうか。

 

YUKIさん:私が住んでいるのは古いエリアで、アクアス(水族館)の方に行くにつれて若い方も増えているようなんですけど、ここ(東地区)はお年寄りの方が多く、その中にもIターン組もいて。古くからいらっしゃる方々と新参者のバランスが丁度いいんですよ。民泊をやるのにうるさくなったらごめんなさいなんて話をしても「うるさいくらいがええ、ええ」って言ってくれたりして。そういうつながりが江津はすごくいいんですね。

私もこうやって好きにやらせてもらっていますけど引っ越したときはビーチクリーンやったり、シニアの英語教室をやったり、行事ごとを手伝ったり、そうやって地域にちゃんと入って、できることをすることでいい関係を持たせてもらっていると自分では思っています。今は波子の町をいろんな人に見てもらいたいと思ってますね。

 

▲米刻堂の2階窓から。海水浴場の駐車場はオフシーズンは無料。ツーリングの休憩スポットやサーファーをはじめ、海遊びをするために県外からやってくる人は多い。

 

波子は駅もあって、町内も散策できるサイズですよね。

 

YUKIさん:私、こっちに来てから20年くらいハロウィンのイベントしてるんです。コロナでできない時期もあったんですけど、今度英語のクラスの子どもたちや地域の子どもたち、地域の人も一緒になってやるんですよ。でね、波子の路地がハロウィンにぴったりなんです。夕方のちょっと不気味な感じとかね。軽が一台通れるか通れないかくらいのトンネルがあって、そこを抜けるとトトロの世界みたいな雰囲気があって。そこを上がっていくと今度はお墓があって、そこから海が見えて、そこには地元の人が作った展望台みたいなところがあってタイミングがいいと汽車がバーっと通ったりして。小ぢんまりしてて、おもしろい場所なんです。

私は別に波子が好きだからじゃないんですよ、住むところだから好きになってるんですよ、この感じわかりますかね。私の思考は「どうせやるなら楽しくやろう」と思ってるんですよ。PTAとか班長とか廻って来るじゃないですか。でもどうせやるなら楽しくやろうってピキんってスイッチが入るんです。楽しくやっているフリをしてるうちに楽しくなっちゃうんです。なんにもこだわらずに流れのまま生きてる感じです

 

「あなたにとっての幸せとは何?」「どういう状況があなたにとっての幸せなの?」という問いかけが江津市の掲げるスローガン『山陰の創造力特区へ』の中に含まれていると感じているのですが、YUKIさんは創造力、クリエイティブに生きるとはどういうことを指していると考えますか?これという正解はなくて良いと思いますし、お好きな解釈でぜひ聞かせてください。

 

YUKIさん:ここに住むのだったら「私は何がしたいのだろう?」「私は何が好きなんだろう」と問うこと。「私にしかできないことって?」例えば、波子海岸のゴミを捨って捨てる、これは一般的。「楽しくゴミを捨うには?」と考えた時、「そのゴミで何か作ろう!」そうしたら、あった、またあった、と達成感みたいな感覚。嬉しくなっちゃうんです。うちの庭は拾ってきたもののミュージアムになっているんですよ。変でしょ?

空き家を見つけてこうやって事業を作ってやっているのも自分でやっていることなんですけど、自分がそこ(その流れ)に合わせて行なっている感覚なんです。ゼロから始めて、お客さんが来ない日もあります。そんな時はDIYできれいに整えたり模様替えをしたり、丁寧に掃除したり忙しいんです。(笑)それでもポツンポツンと人が来てくれて、それでいいと思っているんです。

こんな風に楽しく過ごしているんですけど、子育ても終盤、子どもたちは2つの文化が交わる家庭で育ち、それぞれ自分の決断を貫いて今、自分の人生を切り拓いて歩いているんですね。高校卒業して送迎やお弁当もなくなって、そのタイミングでここが始まって。「これからはここに没頭できる!」って毎日楽しいです。 (笑) 人生はタイミング、それを掴むか、 掴まないか、感じるか、感じないかっていうのが大事。そこの神経をピキピキっとさせておけるかどうかだと思います。

 

ちょっと脱線するんですが、運を掴める人と掴めない人の違いって何でしょうね。

 

YUKIさん:「やってみるか!」って思えるかに尽きるんじゃないですかね。普通やらないよねってことが多い中でやるかやらないか。なにかを始めなくたっていいわけじゃないですか。黙ってじっと、小ぢんまりしてればいいじゃないですか。ここ(米刻堂)をやり始めた頃、いろんなリスクはありましたけど、それでも後悔することがないようにしようと思ってやってます。

 

▲ライブラリーはフリースペースとして使えるので気分転換にもぴったりだ。

 

うちの娘は広島に出てるんですけど、波子の海を見たくて帰ってくるんですよ。そのとき海の奥の方まで行って。「広島には何も音がしないところがない」って言うんですよ。それ聞いたときに「はー。」って。たしかにそうだねって。それは外に出てから気づくことなんですよね。


 
このインタビューを行った日、ちょうど江津市役所ではインターン生たちの研修が行われており、せっかくなので「社会科見学」を兼ねてこの場に同席してもらった。普段から大学生との交流も多いYUKIさんのここまでの話の中に気づきや、感じたことなどきっとあるだろう、ということでインターン生の皆さんおひとりづつYUKIさんの話を聞いて感じたこと、思ったことを率直に話してもらうことにした。質問も大歓迎だ。

 

インターンAさん(女性):地元は島根です。地元の町もUIターンに力を入れ、空き家バンクもやっています。私の実家の周辺にもIターンの方がいて、私は「受け入れる立場」でもあります。先ほど「波子の方々は受け入れてくれた」という話がありましたが「(Iターンの人に対して)地元の人がこういう風に接してくれたら嬉しいな」とか「こういう風にしてもらったのが良かったな」とかそういう話がもしあったら教えてください。

YUKIさん:地元の人が挨拶してくれると嬉しいですね。「あんたどこの人?」って言われるんですよ、見たことないから。「私、あそこの米刻堂の。。。」「ああ、そうかそうか」っていうスモールトークで十分。あとは何かお誘いされたら嬉しいですね。来るか来ないかは別として。ちょっと距離感の難しいところはありますけどね。

インターンBさん(女性):私はあまり自分の意思がなく、大学に来たのもやりたいことが特になくて。。先生が「それなら大学に行ってみたら?」と言われて入ったんです。英語力という先ほどのお話を聞いて自分の意思を育むにはどういう環境で、どういう経験があればいいのかなと思ったんですが、いかがでしょうか?

YUKIさん:いろんな人に出会ったらいろんな方の考え方に触れますよね。私の場合は異文化の夫からいろんなことを感化されました。でもそれが逆に日本のいいところを知ることにもなったんですよね。そうやっていろんな人とオープンになって、たとえ相手の考えや意見に賛同できなくても「ああ、そういう考えがあるんだ」って自分の引き出しに入れておくようにしていったらいいと思います。

 

▲インタビューを行ったスペース。YUKIさんを皆で囲んで話を聞いた。

 

インターンCさん(男性):僕は車を運転するのがすごく好きなんです。今はどこへ行くにも車です。18歳までずっと江津で生まれ育ちました。なにもなくて江津が嫌いというか過ごしづらいと思っていました。でもバイトをして自分で車を運転して、いろんなところへ行くようになって、できないことができるようになったなと思うことがあります。先ほどおっしゃっていた「アメリカを見たから日本の良さに気づいた」と同じように僕も島根を今、違った視点で見れるようになったところがあります。

YUKIさん:私も年齢を重ねてそういう視点が持てたということなんだけどね。いろんなものを見てきたから、今はシンプルなものがいいと思うし、おばあちゃんのお菓子とかも「こんなの誰が食べるん?」と思ってたけど今はわかるわ〜というか、歳取るとわかることがあるんだなって。だから一回外に出ることってすごい大事なんだと思います。どんどん出ればいいと思うんですよ。それで帰ってきてここの良さを知るとか。

ウチの娘は広島に出てるんですけど、波子の海を見たくて帰ってくるんです。そのとき海の奥の方まで行って。「広島には何も音がしないところがない」って言うんですよ。波子の灯台の向こうまで行くと凪(なぎ)のときなんか、ほんとに音がしなくて。娘の話を聞いたときに「はー。」って。たしかにそうだよねって。それは外に出てから気づくことなんですよね。

インターンDさん(男性):県外出身者です。もし僕がここにIターンするとなったらと想像してみました。田舎のコミュニティってみんな仲がいいじゃないですか。僕の地元だと隣の人の顔も知らないし、周りとあんまり関わりがないんです。そういった中で育ってきたので、こっちに来たらどういう風にコミュニケーションとればいいのかなってわからなくて。話題づくりとか、コツとか、なにかあれば教えてください。

YUKIさん:私、アメリカに滞在したことはあるんですけど住んだことはないんです。でも行くといつも思うことがあるんです。あの人たちって例えばスーパーのライン(列)に並んでたりするとしゃべるんですよね、前の人とかレジの人とかと。 店に入ると「How are you doin’(調子はどう?)」 とか言ってちょっとスモールトークするんですよ。ああいうのって日本ってあんまりないじゃないですか。

でもね、私は並んでたら本当はしゃべりたいんですよ。だからどう思われてもいいやと思って話しやすい人だったら話すんです、「今日暑いですよね」とかそんなことでも。楽しいですよね、そういうのって。だから自分の殻を破ればいいんじゃないですか?

恥ずかしいとか、カッコ悪いとかそういうのがなくなったらできますよ。それは何をしたらいいのかっていうと英語勉強したらいいんですよ。英語勉強するとその殻を破らなきゃいけなくなるんですよ。「人は人。自分は自分」っていう。英語はいい修行になるんですよ。面白いでしょ?

 

 

GO GOTSU! special interview #18 / BEIKOKUDO